着物に関わる仕事に興味を持ち、未経験から着付け師へ
「レンタルきもの岡本」で働く着付け師・ヘアセットの方の中には、まったくの未経験から入社をして、技術を身に着けていった方も少なくありません。同じ美容のお仕事といってもまったく異なる分野であるネイリストから、レンタル着物店へと転職した方に、着付け師として活躍するまでの勉強や想いをインタビューしました。
――どうしてネイリストになろうと思ったのでしょうか。
小さいころから細かい作業が好き、美容に関わることが好きでした。たまたま周りにネイリストさんがいらっしゃって、自分もネイルをしていただいたとき嬉しかったので、自分もできたらいいなと思い、その道に進みました。
総合美容専門学校でもネイル専門コースでしたから、和服や着付けを意識したことはあまりありませんでした。ただ、学校へいらっしゃった着付けの先生が、テキパキと仕上げていく姿を見て「カッコイイ」と感じたのは覚えています。
――ネイリストから着付け師へ転職した経緯をお聞かせください。
ネイリストのお仕事は毎日が本当にハードでした。お休みがなかなか取れない、帰宅も遅くなる、お客様との関係が密になりすぎる。毎日が忙殺されるばかりで、大好きだったネイルのお仕事なのに楽しさもやりがいも見つけられなくなっていました。もうちょっとネイリストを続けていくのは限界で、転職先を探しました。
たまたまそのタイミングで、着付けのお仕事をしていらっしゃる知人と会う機会がありました。その方のお話しを伺っていく中で、美容学校時代に見た着付けの先生たちのことも思い出し、私も着付けの仕事がしてみたいと強く感じるようになったんです。そこからは転職に迷いもなく、新しいことに挑戦できる楽しみを感じました。
――着付け師の中でもレンタル着物店を選んだ理由はありますか?
着物に関わるお仕事は未経験だったこともあり、着付けができる職業をいろいろ探した中で、レンタル着物店という選択肢が浮かびました。ただ、着物の種類が多くて難しそうだったり、観光客の方が多くて大変そうだったり、そういうマイナスのイメージも少なからずあったのも事実です。ですが接客が好きだということもあって、自分に合っているかもしれないと思いました。
もっと調べていくうちに、京都のレンタル着物店の発祥のお店であり、たくさんの店舗を持つ岡本に出会いました。会社としてしっかりしていそうだし、散策のレンタル着物だけでなく正装にも力を入れているから幅広いことが学べそう、そしてなんといっても未経験でも大丈夫ということで、応募を決意しました。結果的に他の職種やお店は検討しないまま、この世界に飛び込むことになりましたね。
――実際にレンタル着物店で働きはじめて、どうでしたか?
想像していた以上に海外のお客様が多くておどろきました。やっぱり英語や中国語での対応は大変。わからない言葉はメモして後で調べるを繰り返すことで、なんとか対応ができるようなりましたが、いまでも英語はちょっと苦手です。
しかも11月紅葉シーズンで繁忙期だったこともあり、とても目まぐるしく毎日がすぎていきました。ですがたくさんのお客様と触れ合えることに、楽しさややりがいを感じていました。
――印象に残っているお客様はいらっしゃいますか?
カップルでご来店された海外のお客様なんですが、着物の着付けをされた後にお店の庭で男性が女性にプロポーズをされたことです。入社してすぐのことだったので、強く印象に残っています。
プロポーズって人生の節目ともいえる一大イベントじゃないですか。その大切なとき、岡本の着物を身にまとってくださっていた。こんな素敵な瞬間をお手伝いできる仕事なんだって、とても感動しました。
――着付けの勉強はどのように進めていかれましたか?
岡本への就職が決まってから着付け教室へ自主的に通い始めて、基礎を勉強していきました。ですが自分で着付けをするのと、他の方へ着付けをするのとでは難しさのレベルが違っていました。自分の体型は理解できていても、他の方の体型を美しくカバーするのが難しくて苦戦しました。
また、レンタル着物店ならではの「スピーディーかつキレイに」というのも難易度が高かったです。着付け教室では、そこまで時間を気にしていなかったので。
まずは開店前や閉店後の個人レッスンや、スタッフとのレッスンに励みました。先輩方も丁寧に教えてくださるので、ひとつひとつマスターしていけるのはモチベーションに繋がります。また、月2回の全店舗での練習会で、課題をクリアしていくという目標があるため、向上心を持ち続けられたのも技術取得につながったと思います。
――岡本の着付けの技術に追いつくのは大変ですね。
はい、本当に。街中で観光客の方の着物を見ていてもわかるんです。岡本で着付けをさせていただいたお客様か、他店のお客様なのかが。着付けた瞬間だけでなく、散策をされた後でも着崩れをしておらず、キレイなまま。素早く、美しく、そして動きやすい着付けを提供できるのは岡本だけだと思っていますし、その技術をどんどん磨いていく必要があります。
――いまのお仕事はどんな点が「働きやすい」と感じますか?
幅広い年齢層の方が働いていて、上の年齢の方は技術もバイタリティもすごくて、自分もこうなりたい、頑張らないとと思えます。尊敬できる方が身近にたくさんいるのは、ありがたいですね。背丈や体型のカバー方法など、わからないことがあればすぐに質問できる話しやすい環境で、働きやすさを感じます。
同年代の方もみんな同じ目標に向かって一緒にレッスンできる仲間といった感じで、常にステップアップしようという向上心が持てます。
――では、やりがいはどのようなものだとお考えですか?
やっぱりお客様から温かい感謝の言葉をいただけることです。何よりの励みになります。中でも普段から着物を着られているお客様に、「綺麗に着付けてくれてありがとう」と、技術について褒めていただけたのは嬉しかったです。いわゆる「玄人」にも通用する技術が身に付けられているのだと実感できます。
――Aさんがいま力をいれて取り組まれていることは何でしょうか?
まずは着付けの技術のレベルアップです。今後は訪問着や振袖、花嫁衣裳なども担当できるように、練習会や個人レッスンなどを活用して、どんどん技術を磨いていきたいと思っています。
またSNSにも力をいれていきたいと思っています。お客様にご満足いただくため、常にトレンドを取り入れていくのは当然として、レンタル着物店の代表である岡本は、トレンドを発信していく立場でないとダメだと思います。高校生のお客様が「いまこういうのが流行っている」「このカラーがトレンドだ」とお話ししてくださることなども取り入れつつ、新たな流行をSNSで発信し、多くの方に岡本の魅力を知っていただけるようにしたいです。
――Aさんの将来の目標や夢をお聞かせください。
店舗の先輩たちのように、このお仕事を長く続けていきたいというのがひとつの夢です。さらにお店のお客様だけでなく、自分の子どもや親戚、友人など、周りの方の着付けをしてあげたいと思っています。特に成人式や卒業式、結婚式など、人生の節目ともいえる瞬間をお手伝いできるようになるため、今後も技術を磨いていきたいです。
――最後に、未経験から転職を考えている方へ、メッセージをお願いします。
岡本ならば未経験からでも本当に技術が身に付きます。それも中途半端な技術ではなく、どこに行っても通じるような確かな着付け・ヘアセットの技術です。岡本の仲間たちの楽しみながら努力するのが当たり前という社風が私には心地よいです。着物を仕事にしたいと考え、楽しみながら本気で取り組める方ならば、こんなに良い環境はないと思います。
それから「ここで休みを取りたい」といえばしっかりお休みをいただけるのも嬉しいです。プライベートも仕事も充実した毎日を過ごしたい方にオススメですよ。
レンタルきもの岡本は、創業190年を超える老舗織物店「岡本」の着物レンタル専門店。着付けやヘアセットの技術力が高いと評判を集めています。
未経験からでも着付け師・ヘアセットとしてプロになれる教育体制が確立されているのも特徴です。
細かい作業が好き、オシャレが好きというAさんは元ネイリスト。ネイルのお仕事自体は好きだけれど、毎日がハードでやりがいを見つけられなくなったとき、頭に浮かんだのが専門学校時代の着付けの先生たちだったそうです。「着付けの仕事ってカッコいい」という気持ちから、未経験ながらレンタル着物店への転職を決められ、現在着付け師として活躍されています。