着物に関わる仕事として、日々多くのお客様へ「非日常の着物の楽しみ」を提供するレンタル着物店。京都の老舗レンタル着物店である「岡本」監修のもと、一生モノの着付けの技術とはどのようなものか、ベテラン着付け師と新人着付け師の仕上がりを比較しながら見ていきましょう。
「レンタルきもの岡本」へ入社した方は、全員が着付けやヘアセットのテストを受けることになります。一定レベルの技術が身に付いてはじめて、お客様への着付け・ヘアセットが認められるという厳しいものです。この美しい着付けをわずか15分程度で仕上げられてこそ、はじめて「着付けのプロ」を名乗れるのだとか。
元々の経験やスキルにもよりますが、だいたい半年~1年半ほどの期間はかかるとのこと。お客様へ高いクオリティの着付けを提供しているからこそ、京都で7店舗も展開する人気店となっています。
社歴10年以上のベテラン着付け師Sさん
レンタルきもの岡本に10年以上勤務するベテラン着付け師のSさんは、体にしっかりと巻き付けられた、皺の寄らない着物を手早く仕上げるプロです。襟やおはしょりの作り方など、細かい点も丁寧に、尚且つお客様に早く出立いただけるよう15分以内に仕上げるコツを伺いました。
チェックポイント:できるだけなだらかな体型になるよう補正をする
襦袢を着用する前の段階で行う補正作業は、着物を美しく着付ける基礎となる部分です。レンタル着物店には様々な体型のお客様がいらっしゃるため、綺麗に見せるにはどうすべきか瞬時に見極める必要があります。基本は凹凸のない、なだらかな体型にすること。特にお腹とお尻のラインが平らになるように気を付けましょう。
チェックポイント:首から足の先まで、まっすぐずれないように
首元や背中だけでなく、襦袢全体がまっすぐに着せられているか確認しましょう。この段階でずれが発生してしまうと、いくら着物をまっすぐに着せても歪んだような印象になってしまいます。また、衣文部分はこぶしが縦にひとつ程度は入るように抜くことで、粋な印象を与えます。
チェックポイント:横からでも隙間が見えないように体へ密着させる
襦袢の段階で体から襟が浮いてしまうと、だぼついた印象の仕上がりになります。襟の幅は均等に、胸元へしっかりと密着させましょう。
チェックポイント:体を「包む」ことを意識して
襦袢と同じく着物も体から浮くことがないように着付けていく必要があります。とくに胸元の襟部分や合わせが浮いてしまうと、だらしない印象を与えてしまうだけでなく、動いているうちにだんだんと崩れてくる原因にもなります。
チェックポイント:脇の下などの皺が寄りやすい部分を確認しながら
帯を巻く前の段階で身頃に皺があると、仕上がりもそのままの状態になってしまいます。前後だけでなく脇の下や肩回り、お尻の下部分など、皺がよりやすい、もしくは凹凸ができやすい箇所にも皺が寄っていないか確認しながら進める必要があります。
おはしょりが膨らんでしまわないように
おはしょり部分をしっかりとつくるのはもちろん、幅を均等に、そして体から膨らんでしまうことがないように着付けます。急いで着付けようとすると雑になりがちな部分ですが、仕上がりの美しさが段違いですので、丁寧につくりあげてください。
前後左右どの方向から見ても皺やたるみがないことが、美しい着付けの条件です。自分が着付けをする際、どこに皺が寄りがちかを把握しておくことが、技術を身に付ける第一歩として重要になります。しっかりと時間を計って、どの部分にどれくらいかかっているかも、同様に把握しておくようにしましょう。
チェックポイント:美しく着崩れない、尚且つ動きやすい締め付けに
長時間でも着崩れない着付けのためには、できるだけしっかりと締めることが大切です。ですがレンタル着物店にご来店されるお客様の多くは、普段は着物に触れていない方ばかり。散策が苦しくなってしまわないよう、お客様に締め付け具合を確認しながら最適な具合を見つけていくことが大切です。
身頃にたるみが出ないように注意をしながら、帯を締める位置を決める
プランのご確認が終わりましたら、プラン内容に合わせてお着物・帯・帯どめなどのお見立てをします。各店舗1000点以上の着物をご用意していますので、お見立ての時間そのものを楽しんでいただけるようにご案内しています。
チェックポイント:文庫結びや蝶結びが来る位置もポイント
帯の結い方は様々な種類がありますし、現在はアレンジの幅も多様です。お客様が選ばれた着物に合わせて結い方を提案する知識力が必要です。また、しっかりと帯が広がり、美しく立つように、位置の調整が重要です。
見た目を美しく仕上げることと同様に、着物で楽に活動ができることも着付けの重要なポイントです。どのくらいの時間散策されるのか、どういった場所へ行くのかなども確認しながら、着崩れずに動き続けられる最適な締め方を見極めていきましょう。
着付け師と言われるとまずは資格が必要!と思ってしまいますが、実際には学校や教室に行くだけではなく、より多くの着付けを経験してスキルを身に付けることが大切です。
着付けは回数を重ねれば重ねるほど素早く、かつ美しく仕上げられるようになります。レンタル着物店のように多くのお客様が来店され、尚且つ着付けのクオリティにこだわった環境で適切なノウハウを培えると良いですね。
レンタルきもの岡本は、創業190年を超える老舗織物店「岡本」の着物レンタル専門店。着付けやヘアセットの技術力が高いと評判を集めています。
未経験からでも着付け師・ヘアセットとしてプロになれる教育体制が確立されているのも特徴です。
補正や襦袢が美しく着付けできているかで、完成したときの印象が大きく変わります。なだらかなラインをつくり、そこに襦袢をしっかりと密着をさせることができれば、着物がより美しく仕上がります。前からだけではなく、後もまっすぐに着せられているか確認を忘れないようにしましょう。